設置者・管理者向け(児童発達支援・放課後等デイサービス)

児童発達支援・放課後等デイサービスの設置者・管理者向けガイドライン
設置者・管理者向けガイドライン

厚生労働省が作成する設置者・管理者向けガイドラインの運営基準などの内容を掲載しております。管理者は、各施設の運営にリーダーシップを発揮し、施設職員のエンパワーメントに着目することが必要だと考えています。何よりポジティブなチームの結成とファミリー精神を築き、一人ひとりの能力を存分に発揮することが、お客様の満足度向上へと繋がります。

<適切な支援と質向上> 

ア.適正な規模の利用定員

適切な生活環境と事業内容が確保されるよう、子どもの情緒面への配慮や安全性の確保の観点から、適正な利用定員を定めること。

イ.適切な職員配置

指導員または保育士、児童発達支援管理責任者、機能訓練担当職員の配置が必須であり、常時見守りが必要な子どもへの支援等のために指導員または保育士を人員配置基準を上回って配置することも考慮する。

ウ.適切な設備等の整備(設備基準)

様々な障害のある子どもが安全に安心して過ごすことができるようバリアフリー化や情報伝達への配慮等、子ども一人当たり2.47㎡の床面積が求められていることを参考としつつ 、適切なスペースを確保する。指導訓練室のほか、おやつや学校休業日に昼食がとれる空間、静かな遊びのできる空間、雨天等に遊びができる空間、子どもが体調の悪い時等に休息できる静養空間、年齢に応じて更衣のできる空間等を工夫して確保することが必要である。室内のレイアウトや装飾にも心を配り、子どもが心地よく過ごせるように工夫することが望ましい。屋外遊技場の設置や学校と連携して校庭等を利用したり、近隣の公園等を有効に活用すること。備品については、遊具のほか、障害種別、 障害特性及び発達状況に応じた支援ツールを備えることも考慮していく。

<適切な事業所の管理> 

ア.運営理念・方針の設定、見直しと職員への徹底

運営規程には以下の重要事項は必ず定めておく必要がある。

【運営規程の重要事項】

・事業の目的及び運営の方針

・従業者の職種、員数及び職務の内容

・営業日及び営業時間

・利用定員

・放課後等デイサービスの内容並びに保護者から受領する費用の種類及びその額

・通常の事業の実施地域

・サービスの利用に当たっての留意事項

・緊急時等における対応方法

・非常災害対策

・事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類

・虐待の防止のための措置に関する事項

・その他運営に関する重要事項

イ.複数サイクルでの目標設定と振り返り

本ガイドラインに基づく自己評価を実施し、その結果を事業運営に反映させ、自己評価結果については事業所の会報やホームページ等で公表する。

ウ.コミュニケーションの活性化等

PDCAサイクルによる業務改善が適切に効果を上げるには、現状の適切な認識・把握と事業所内での意思の疎通、情報共有が重要である。

エ.子どもや保護者様の意向等の把握

PDCAサイクルによる業務改善を進める上で、支援を利用する子ども及び保護者の意向や満足度を把握することが必要であり、アンケート調査を実施して、意向等を把握することが考えられる。

オ.支援の継続性

子どもや保護者への支援の継続性の観点から継続的・安定的に運営することが望ましい。やむを得ず事業を廃止しまたは休止しようとする時は、一月前までに都道府県知事等に届け出なければならない。この場合、子どもや保護者に理由を丁寧に説明するとともに、他の放課後等デイサービス事業所を紹介する等、影響が最小限に抑えられるように対応すること。

<従業者の知識・技術の向上> 

ア従業者等の知識・技術の向上意欲の喚起

児童発達支援管理責任者及び従業者の知識、技術の向上は、提供内容の向上に直結するものであり、管理業務の一つである。期待される役割、子どもの発達段階ごとの特性、障害種別、障害特性、関連する制度の仕組み、関係機関の役割、児童虐待への対応、障害者の権利に関する条約の内容等を理解することが重要であり、こうした知識の習得に向けた意欲を喚起する必要がある。

イ.研修受講機会等の提供

従業者等の資質向上を図るため、研修を実施する等の措置を講じなければならない。

<関係機関・保護者様との連携> 

ア.相談支援事業者との連携

障害児相談支援事業所が作成する障害児支援利用計画は、相談支援専門員が総合的な援助方針や解決すべき課題を踏まえ、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。相談支援専門員が開催するサービス担当者会議の招集に対し、当該子どもの状況に精通した最もふさわしい者を参画させなければならない。

イ.学校との連携

年間計画や行事予定等の交換、子どもの下校時刻の確認、引継ぎの項目等、学校との間で情報を共有しておく必要がある。下校時のトラブルや子どもの病気、事故の際の連絡体制について、事前に学校と調整し、児童発達支援管理責任者や送迎を担当する従業者に対し徹底しておく必要がある。

ウ.医療機関や専門機関との連携

子どもの事故やケガ、健康状態の急変が生じた場合に備え、近隣の協力医療機関をあらかじめ定めておく必要がある。障害種別や障害特性の理解や特性に応じた活動や支援方法に関すること、支援困難事例や子ども虐待のケース等については、専門機関から助言や研修を受けること等により連携を図りながら適切な支援を行っていく必要がある。

エ.保育所・児童発達支援事業所等との連携

子どもの発達支援の連続性を保障するため、就学前に利用していた保育所や幼稚園、認定こども園や児童発達支援事業所等と連携し、情報の共有と相互理解に努めることが重要である。

オ.他の放課後等デイサービス事業所等との連携

発達支援上の必要性により、他の放課後等デイサービス事業所等を併せて利用する子どもについて、支援内容を相互に理解しておくため、了解を得た上で、他の事業所との間で相互の個別支援計画の内容等について情報共有を図ること。

カ.放課後児童クラブや自治会等との連携

放課後児童クラブの放課後児童支援員等が障害のある子どもへの対応に不安を抱える場合等については、 放課後等デイサービスとの併行利用や、保育所等訪問支援等の積極的活用を図る等、放課後児童クラブ等と連携を図りながら、子どもと放課後児童支援員等に対して適切な支援を行っていくことが重要である。

キ.自立支援協議会等への参加

アからカまでに記載した関係機関との連携を円滑なものとするため、設置者、管理者または児童発達支援管理責任者は、自立支援協議会子ども部会等へ積極的に参加することにより、関係機関との関係性を構築しておく必要がある。虐待等により福祉的介入が必要とされるケースは、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等へ参加する。

ク.保護者様との連携

学校への子どもの出欠や帰宅の状況について、保護者との連絡により確実に確認することが必要である。下校時のトラブルや病気、事故の際の連絡体制について、児童発達支援管理責任者や送迎を担当する従業者に対し徹底しておく。日頃から子どもの状況や発達の状況、課題について共通理解を持つことが重要である。保護者様への連絡や支援について、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握、管理するよう努める必要がある。家庭内での養育について、ペアレント・トレーニングや環境整備等の支援を必要に応じて児童発達支援管理責任者や従業者に実施させることが望ましい。

<説明責任>

①運営規程の周知

運営規程については事業所内の見やすい場所に掲示する等によりその周知を図る。

②支援利用申込時の説明

利用申込時において、運営規程や支援の内容を理解しやすいように説明し、利用者負担について丁寧に説明を行う必要があるため、児童発達支援管理責任者にも徹底しておく。

③相談支援等

保護者様からの相談に適切に応じるとともに、必要な助言と支援を行うことも必要である。例えば、定期的な面談や訪問相談等を通じて、子育ての悩み等に対する相談を行ったり、子どもの障害についての理解が促されるような支援を行うことが望ましい。児童発達支援管理責任者及び従業者に対して、保護者様との定期的な面談や相談支援について、その適切な実施を促すとともに、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握、管理する必要がある。父母の会の活動を支援したり、保護者会を開催したりすることにより、保護者様同士のつながりを密にして、安心して子育てを行っていけるような支援を行うことも望まれる。 家族支援は、兄弟や祖父母への支援も含まれる。特に兄弟は、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、兄弟向けのイベントを開催する等の対応を行うことが望ましい。

④苦情解決対応

放課後等デイサービスに対する子どもや保護者からの苦情について、迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口や苦情受付担当者、苦情解決責任者、第三者委員の設置、解決に向けた手順の整理等、迅速かつ適切に解決が図られる仕組みを構築することが求められる。苦情受付窓口については、子どもや保護者に周知するとともに、第三者委員を設置している場合には、その存在についても、周知する。設置者、管理者は、苦情解決責任者として、迅速かつ適切に対応する。

⑤適切な情報伝達手段の確保

事業所は定期的に会報等を発行し、活動概要や行事予定、連絡体制等の情報を発信することが必要である。視覚障害や聴覚障害等の障害種別に応じて、設備・備品への配慮のほか、意思の疎通、情報伝達のための手話等による配慮が必要である。

⑥地域に開かれた事業運営

地域住民の事業所に対する理解の増進や地域の子どもとしての温かい見守り、地域住民との交流活動の円滑な実施等の観点から、事業所はホームページや会報等を通じて活動の情報を積極的に発信することや、事業所の行事に地域住民を招待する等、地域に開かれた事業運営を図ることが必要である。実習生やボランティアの受入れは、事業所及び実習生やボランティア双方にとって有益であり、積極的に対応することが望ましい。 ただし、実習生やボランティアの受入れに当たっては、事故が起きないよう適切な指導を行う等の対応が必要である。また、実習生やボランティアの受入れにあたっては、事業所の理念やプログラム内容及びそれぞれの子どもの支援上の注意事項等を理解させること。

<緊急時の対応と法令順守等>

緊急時対応

子どもの事故やケガ、 健康状態の急変が生じた場合は、速やかに保護者、協力医療機関及び主治医に連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。緊急時における対応方法について、「緊急時対応マニュアル」策定と児童発達支援管理責任者及び従業者への周知が必要である。

非常災害・防犯対策

非常災害に備えて消火設備等の必要な設備を設けるとともに、非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の避難方法や、関係機関への通報及び連絡体制を明確にするとともに、それらを定期的に児童発達支援管理責任者及び従業者や保護者に周知しなければならない。非常災害の発生に備え、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない。重大な災害の発生や台風の接近等により危険が見込まれる場合、特に教育委員会や学校が休校や下校時刻を早める等の判断を発表した場合には、子どもの安全確保のために状況に応じて休所とする等の適切な対処をするとともに、保護者や学校等の関係機関との連絡体制を構築しておく必要がある。障害種別や障害特性ごとの災害時対応について理解しておき、子どもごとの個別支援計画に災害時の対応について記載させることも考慮する。子どもが犯罪に巻き込まれないよう、事業所として防犯マニュアルの策定や、地域の関係機関と連携しての見守り活動、子ども自身が自らの安全を確保できるような防犯への取組が必要である。

虐待防止の取組

児童発達支援管理責任者及び従業者による子どもに対する虐待を防止するため、虐待防止委員会の設置等、必要な体制の整備が求められる。虐待防止委員会の責任者は、通常、管理者が担うこととなる。虐待防止委員会を組織的に機能させるために、苦情解決の第三者委員等の外部委員を入れてチェック機能を持たせるとともに、児童発達支援管理責任者等、虐待防止のリーダーとなる職員を虐待防止マネージャーとして配置し、研修や虐待防止チェックリストの実施等 、具体的な虐待防止への取組を進める。定期的な研修を実施し、又は自治体が実施する研修を受講させるほか、自らが虐待防止のための研修を積極的に受講する等により理解し、虐待の防止への取組を進める必要がある。特に、「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」は必ず読むようにする。各都道府県で実施する虐待防止や権利擁護に関する研修を受講した場合には、 伝達研修を実施することが重要である。児童発達支援管理責任者及び従業者が、 虐待を発見しやすい立場にあることを認識し、子どもの状態の変化や態度等の観察や情報収集により、虐待の早期発見に努めさせる必要がある。従業者等からの虐待(特に性的虐待)は、密室化した場所で起こりやすいことから、送迎の車内を含め、密室化した場所を極力作らないよう、常に周囲の目が届く範囲で支援を実施する必要がある。従業者等からの虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合は、障害者虐待防止法第16条に規定されている通報義務に基づき、通所給付決定をした市区町村の窓口に通報する。この時に、市区町村に通報することなく、事業所の中だけで事実確認を進め、事態を収束させてしまうと通報義務に反することとなるため、必ず市区町村に通報した上で行政と連携して対応を進める。保護者による虐待については、相談支援やカウンセリング等により未然防止に努めることが重要であることを認識する。保護者による虐待を発見した場合は、児童虐待防止法第6条に規定されている通報義務に基づき、市区町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所相談所等へ速やかに通告するよう徹底する必要がある。虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市区町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所、市区町村の児童虐待対応窓口や保健所等の関係機関と連携して対応を図っていくことが求められる。

身体拘束への対応

従業者等が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限することや、自分の意思で開けることのできない居室に隔離すること等は身体拘束に当たり、緊急やむを得ない場合を除き禁止されている。やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性、非代替性、一時性が要件となるが、身体拘束の検討が必要なケースについては、代替性がないか等について慎重に検討した上で、それでもなお、身体拘束を行わざるを得ない事態が想定される場合には、いかなる場合にどのような形で身体拘束を行うかについて組織的に決定する必要がある。児童発達支援管理責任者に対しては、個別支援計画に身体拘束が必要となる状況、身体拘束の態様、時間等について、子どもや保護者に事前に十分に説明をし、了解を得た上で記載させることが必要である。身体拘束を行った場合には、行った担当者または児童発達支援管理責任者からその様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等必要な事項の記録とともに報告を受ける。なお、必要な記録がされていない場合は、運営基準違反となることを認識しておく必要がある。

衛生・健康管理

感染症の予防や健康維持のため、手洗いやうがいの励行、おやつや学校休業日における昼食の提供に係る設備の衛生管理を徹底することが必要である。子どもの来所時の健康チェック等、健康管理に必要となる器械器具の管理を適正に行うことが必要である。感染症又は食中毒の対応や排泄物又は嘔吐物に関する処理方法について、対応マニュアルを策定しておくことが必要である。インフルエンザ等の感染症により集団的感染のおそれがある場合、特に教育委員会や学校が休校を発表した場合は、子どもの安全確保のために状況に応じて休所とする等、適切に対処するとともに、保護者や学校等の関係機関との連絡体制を構築しておく必要がある。

安全確保

サービス提供中に起きる事故やケガを防止するために、室内及び屋外の環境の安全性について毎日点検し必要な補修等を行い、危険を排除するよう必要な措置を講じておく。設置者、管理者は、発生した事故事例や事故につながりそうな事例について、児童発達支援管理責任者と従業者間で共有するため、いわゆる「ヒヤリハット事例集」を作成することが望ましい。

秘密保持等

設置者は、従業者等であった者が、その業務上知り得た秘密を漏らすことがないよう、誓約書の提出や雇用契約に明記する等、必要な措置を講じなければならない。関係機関に子ども又は保護者に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により同意を得させておかなければならない。 また、ホームページや会報等に子ども又は保護者の写真や氏名を掲載する際には、許諾を得ることが必要である。その職を辞した後も含めて、正当な理由がなく業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。

 

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