知的障害(知的発達症)とは|子どもの特徴・年齢別のサイン、軽度の場合と原因、受けられる支援
知的障害とは、考える・理解する・覚える・判断するといった知的な働きの発達がゆっくりで、日常生活や学校生活を送るうえで支援が必要な状態のことです。医学的には「知的発達症」「知的能力障害」とも呼ばれます。
「ことばがなかなか増えない」「同じ年の子に比べて、身の回りのことがゆっくり」「授業についていくのが難しそう」。こうした様子から、知的障害について調べている保護者の方も多いと思います。このページでは、知的障害の特徴、年齢ごとに気づきやすいサイン、原因、ほかの困りごととの違い、相談先をまとめました。
このページでわかること
・知的障害(知的発達症)とはどんな状態か、程度の分け方
・年齢ごとに気づきやすいサインと、軽度の知的障害の特徴
・原因について分かっていること、境界知能・学習障害(LD)との違い
・検査・診断と療育手帳、学校での学びの場
・家庭でできる工夫、相談先と、ぐりーんでの取り組み
知的障害(知的発達症)とは
知的障害は、次の2つがそろい、それが子どものころ(発達期)から見られる状態をいいます。人口のおよそ1%にみられるといわれています。
ものごとを理解する、覚える、考えて判断する、学ぶといった力の発達が、同じ年齢の子に比べてゆっくりです。知能検査ではIQ(知能指数)がおおむね70未満がひとつの目安とされます。
読み書き・計算・時間やお金の理解、人とのやりとりやルールの理解、着替え・食事・トイレなどの身の回りのことで、年齢に応じた支援が必要になります。
程度は「軽度・中等度・重度・最重度」に分けられます。今の診断基準では、IQの数値だけでなく、ふだんの生活の中でどのくらい支援が必要かをあわせて判断します。知的障害のあるお子さまの多くは軽度です。
知的障害は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD、てんかんなどと一緒に見られることもあります。くわしくは「自閉スペクトラム症(ASD)」、「てんかん」のページもご覧ください。
年齢ごとに気づきやすいサイン
首すわり・お座り・歩き始めがゆっくり、ことばが出るのが遅い、まねっこや指さしが少ない、といった様子が見られることがあります。1歳6か月児健診で発達のゆっくりさを伝えられ、気づくご家庭もあります。
ことばが増えにくい、簡単な指示が伝わりにくい、着替え・食事・トイレなどの身の回りのことが年齢よりゆっくり、遊び方が年下の子に近い、といった様子が目立つことがあります。3歳児健診や園の先生からの声かけがきっかけになることもあります。
授業の内容が理解しにくい、読み書きや計算、時計やお金の理解でつまずく、友だちとの会話や遊びのルールについていきにくい、といった形で表れます。学年が上がり、学習内容が抽象的になるほど困りごとが目立ちやすくなります。
子どもの発達のペースには個人差があり、幼いうちは判断が難しいこともあります。「様子を見ましょう」と言われて迷っているときは、「診断前の相談先・受診の流れ」もご覧ください。
軽度の知的障害とは|特徴と気づかれにくい理由
知的障害の程度は、軽度・中等度・重度・最重度に分けられます。知能検査の数値(IQ)では、おおむね50〜69(70未満)が軽度の目安です。
軽度の知的障害では、日常会話や身の回りのことはある程度できるため、幼児期には気づかれにくく、小学校に入って勉強が難しくなってから分かることも少なくありません。
・話せるのに、話の内容や先生の指示を理解するのに時間がかかる
・くり返し練習しても、読み書きや計算がなかなか身につかない
・「時間」「お金」「先のこと」など、目に見えないことの理解が苦手
・友だちとの会話のテンポについていけず、一人で過ごすことが増える
・失敗が続き、自信をなくしたり、学校に行きたがらなくなったりする
本人は一生懸命がんばっているのに、「やる気がない」「なまけている」と誤解されてしまうことがあります。早めに気づき、理解のしかたに合った教え方に変えることで、できることは着実に増えていきます。
軽度の知的障害のお子さまへの関わり方のポイント
・説明は短く具体的に。「ちゃんとして」ではなく「いすに座って、手はひざ」のように伝える
・絵や写真、実物を使い、目で見て分かるようにする
・1回でできなくても、同じやり方で何度もくり返し練習する
・時間やお金など目に見えにくいことは、時計やおもちゃのお金で実際にやってみる
・できたことをその場でほめて、自信を積み重ねる
原因について分かっていること
知的障害の原因ははっきりしないことも多く、原因が特定できるのは一部です。分かっている原因には、次のようなものがあります。
・染色体や遺伝子の違い(ダウン症など)
・妊娠中の感染症など、おなかの中にいるときの影響
・出産のときのトラブル
・乳幼児期の脳炎・髄膜炎などの病気や、頭のけが
育て方やしつけ、愛情不足が原因で知的障害になることはありません。ご自分を責めずに、お子さまに合った関わり方を一緒に考えていきましょう。
ほかの困りごととの違い
境界知能
IQがおおむね70〜84くらいで、知的障害にはあたらないものの、勉強や生活で困りごとが出やすい状態です。診断名ではありません。くわしくは「境界知能とは」をご覧ください。
学習障害(LD)
全体的な知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算するなど特定の学習だけに強い困難がある状態です。くわしくは「学習障害(LD)の特徴・原因・支援方法」をご覧ください。
ことばの遅れ
ことばの出始めが遅いだけで、理解する力や身の回りのことは年齢相応、というお子さまもいます。ことばの遅れについては「ことばの遅れ」の記事でご紹介しています。
検査・診断と療育手帳
知的障害かどうかは、子どもの発達を診ている小児科・児童精神科・小児神経科などで、知能検査や発達検査の結果と、ふだんの生活の様子をあわせて判断します。
知的障害があると判定された場合、「療育手帳」を受け取ることができます。判定はこども家庭相談センター(児童相談所)などで行われ、申請の窓口はお住まいの市町村です。療育手帳があると、各種の手当や割引などの制度を利用できる場合があります。
なお、放課後等デイサービス・児童発達支援を利用するための「受給者証」は、療育手帳がなくても取ることができます。違いについては「受給者証の取り方・療育手帳との違い」をご覧ください。
学校での学びの場
小学校・中学校では、通常の学級のほかに、少人数で一人ひとりに合わせて学ぶ「知的障害特別支援学級」や、「特別支援学校」などの学びの場があります。どこがよい・悪いではなく、お子さまが安心して学べる場所を、学校や教育委員会と相談しながら選びます。くわしくは「特別支援学級(支援級)・通級とは」をご覧ください。
家庭でできる工夫
短く、具体的に伝える
「ちゃんとしてね」ではなく「くつをそろえてね」のように、何をすればよいかを短いことばで1つずつ伝えます。
絵や写真で見せる
ことばだけでは伝わりにくいことも、絵や写真、実物を見せると分かりやすくなります。1日の流れを絵で並べておくと、見通しが持てて安心しやすくなります。
手順を細かく分ける
着替えなら「シャツを持つ→頭を通す→腕を通す」のように、手順を小さく分けて1つずつ練習します。最後の1つだけ自分でやるところから始めると、「できた」を感じやすくなります。
同じやり方をくり返す
毎回同じ順番・同じことばかけで取り組むと覚えやすくなります。家と園・学校・事業所でやり方をそろえるのも効果的です。
できたらすぐにほめる、役割をつくる
できたその場で具体的にほめましょう。配膳やカーテンを開けるなど、家の中にお子さまの役割をつくると、自信と生活の力の両方が育ちます。
気になったときの相談先
・市町村の保健センター(乳幼児健診の担当)、障害福祉の窓口
・かかりつけの小児科、子どもの発達を診ている小児科・児童精神科・小児神経科など
・こども家庭相談センター(児童相談所)
・園の先生、学校の担任の先生・特別支援教育コーディネーター
・児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所(見学・相談)
就学前の学びの場の選び方は「就学相談」のページでご紹介しています。
ぐりーんでの取り組み
ぐりーんでは、知的障害のあるお子さまが多くご利用されています。お子さまのペースに合わせて、生活・学習・人との関わりの力を一つずつ育てています。
・見通しを伝える:活動の流れや手順を、絵や写真で示します
・手順を細かく分けて練習:できるところから一つずつ取り組みます
・身辺自立:着替え・食事・トイレなど、身の回りのことを練習します
・学習:数や文字の学習に、お子さまのペースで取り組みます
・ソーシャルスキル(SST):あいさつ・順番を待つ・気持ちを伝えるなどを練習します
・はたらく準備:中高生は、将来の仕事や暮らしにつながる力を育てます
・学校との連携:保護者のご希望があれば、学校と様子を共有します
療育手帳や診断がなくても、受給者証の申請前からご相談いただけます。2歳のお子さまは見学・相談を受け付けています。ご利用は3歳からをおすすめしています。
よくあるご質問
Q. 知的障害(知的発達症)とは何ですか?
A. 考える・理解する・覚える・判断するといった知的な働きの発達がゆっくりで、日常生活や学校生活で支援が必要な状態が、子どものころから見られるものです。知能検査ではIQがおおむね70未満がひとつの目安で、程度は軽度・中等度・重度・最重度に分けられます。
Q. 軽度の知的障害はいつごろ分かりますか?
A. 軽度の場合は、日常会話や身の回りのことがある程度できるため、幼児期には気づかれにくく、小学校に入って勉強が難しくなってから分かることも少なくありません。乳幼児健診や園・学校の先生からの声かけがきっかけになることもあります。
Q. 知的障害は治りますか?
A. 知的障害そのものがなくなるわけではありませんが、子どもは知的障害があっても成長し続けます。理解のしかたに合った教え方や環境の工夫によって、できることは着実に増えていきます。
Q. 境界知能との違いは何ですか?
A. 知的障害はIQがおおむね70未満で、生活の中で支援が必要な状態です。境界知能はIQがおおむね70〜84くらいで、知的障害にはあたりませんが、勉強や生活で困りごとが出やすい状態をいいます。境界知能は診断名ではありません。
Q. ぐりーんではどんな支援を受けられますか?
A. 知的障害のあるお子さまが多くご利用されています。絵や写真で見通しを伝え、手順を細かく分けて練習しながら、着替え・食事・トイレなどの身辺自立、数や文字の学習、ソーシャルスキル(SST)、中高生のはたらく準備に取り組んでいます。保護者のご希望があれば、学校と様子を共有します。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「知的障害(精神遅滞)」/文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」
このページは一般的な情報です。お子さまの状態については、医師や専門の相談機関にご相談ください。
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